湯西川ダム工事現場見学実施報告

関東支部栃木グループ

清木隆文

 

日時:平成20年11月11日 10:00〜15:00

場所:国土交通省関東地方整備局湯西川ダム建設現場

参加者:28名

1.出席者数および集合状況について

 今回、栃木県グループの活動の一環として、国土交通省関東地方整備局 湯西川ダム工事の建設現場を見学させて頂いた。午前8時30分に22名が宇都宮市役所で集合し、バスで現場まで移動し、その他6名が現場事務所に自家用車3台で直接現場事務所に集合した。バスは、宇都宮市内から現場への道中、日光宇都宮自動車道、鬼怒川温泉、川治温泉へと進み、車窓からの紅葉を楽しませてくれた(写真−1)。

2.現場の概要説明

 見学会参加者は、午前10時から湯西川ダム工事事務所の会議室において、小宮工務第一課課長より、工事の経緯と全体の動きについて、資料をもとに説明を受けた(写真−2)。湯西川ダムの工事は、昭和57年の4月に湯西川ダム調査事務所を開設以来、調査とダム本体の工事に先駆けた、住民の代替地、県道の付け替えなどが行われ、現場で行われている工事が宅地造成、道路、トンネル、橋梁など多岐に渡っていることが説明された。また、平成12年10月のダム基本計画の改訂によって、平成23年度完成が決められており、急速な施工を必要とするダムの建設工事であることが理解できた。

   

写真−1 五十里ダム湖半の紅葉の様子     写真−2 現場の概要説明

 

3. 湯西川ダム本体工事現場の見学

 小宮工務第一課課長の引率のもと、見学者は湯西川ダム工事事務所のマイクロバス2台に分乗して、湯西川ダムの本体が建設される現場へと移動した。その後仮設の階段を上り、右岸側ダム天端標高の平地から、ダム軸に沿って対岸を眺めた後、鹿島・清水JVの所長から、本体工事の概要を資料に従って説明を受けた(写真−3)。湯西川ダムは、重力式コンクリートダムで、RCD工法によって平成23年7月までの約3年でダムクレストの長さ 320m、高さ119mとする工程の説明を受けた。ダム本体工事は、施工者の高度な施工技術や特殊な施工方法の提案を受ける総合評価方式により工事契約し、標準より98日工期を短縮すること、コンクリートの品質を高度に管理することなどを技術的に工夫するとのことであった。通常のコンクリートダムは、コンクリートの骨材をストックするために原石山を作るのに対して、この湯西川ダムは、鬼怒川に建設された川治ダム(アーチ式コンクリートダム:昭和59年完成)のダム湖に堆積した砂礫と、ダム本体基礎掘削から出た岩及び湯西川の河床砂礫を利用して、コンクリートを打設する点が特徴である。地質は、凝灰角礫岩(火山礫凝灰岩)の硬い部類(節理が比較的多い) と少し軟らかい部類の2種が主な構成岩で、右岸側に、礫を伴う流紋岩の貫入が見られると推定されていた(写真−4)。節理分布の特徴は、右岸側が流れ目、左岸側が差し目で、カーテングラウトを堤高の2/3に相当する深さまで実施して、河床を改良する通常の工法で対応するとのことであった。地域住民には、「本体JVだより」を定期的に配布し、工事の進捗に対して住民の理解を得る工夫を行っていることが説明された。

4.オクタボリ沢進入路関連工事

 その後、オクタボリ沢進入路において、付け替え県道14号橋の建設現場では、下部工(10mの大口径深礎杭から直径6m、高さ60mのコンクリートピア)の建設を終了し、上部工を行う準備が行われていた(写真−5)。付替県道8号トンネルの端部掘削は、大日本土木が工事を行っていた。周辺の地山露頭から観察されてわかるように、節理が多いので、鏡吹付を行った後に装薬し、発破で掘削する工法で掘進する予定で、現在坑口から8m程度の掘進長であった(写真−6)。湧水は、他の付替トンネルの施工事例から、多いと予想されていると説明された。節理が多いので、坑口付近の地山はモルタル注入し、パイプルーフで補強しつつ、掘削をすすめていた。掘削工法は、NATMで、インバートと有りの覆工で施工される。

   

写真−3 ダム本体工事現場の説明風景   写真−4 ダム本体周辺の地質図と岩石試料

   

写真−5 付替県道14号橋下部工            写真−6 8号トンネル切羽

5.5号橋上部PC張出し架設工

 昼食を現場事務所会議室でとったあと、5号橋のPC張出架設(ワーゲン工法)による上部工を行っている現場を見学させて頂いた(写真−7)。この現場は、錢高組が工事を行っていた。見学者は、33mの高さを持つコンクリートの楕円中空断面を持つ橋脚に取り付けられリフトと階段に分かれて登り、上部工の橋桁部へと上がった(写真−8)。橋桁部は17のブロックに分けられて、「やじろべえ」のようにワーゲンと呼ばれる移動型枠を橋脚から両端にバランスを取りながら移動してコンクリートを現場で打設し、プレ・ストレス(PS)を与えて緊張する作業を繰り返す工事であり、完成間近であった。橋桁は橋軸方向だけでなく、横断方向にPSをかけて緊張し、最後にそのパイプをモルタルミルクで満たす工事を行うと説明を受けた。今回施工中の橋桁まで登らせて頂いたので、コンクリートの橋桁が中空構造となっていること様子を間近で見ることができた。

6.8号橋下部深礎杭工

 最後に、8号橋の下部工を見学させて頂いた。この現場はNOVAC (ノバック)が工事を行なっていた。現在深礎杭を建設中で、左岸山側斜面の地質が悪いため、当初の施工計画を変更し、親杭工法の土留で施工基面を確保し、現在深礎の第2ベンチのせん断鉄筋の組立を行っていた(写真−9,10)。また右岸側の深礎杭は、竹割工法と称する掘削および支保工法で、最小限の断面を確保して掘削を行い、深基礎を施工するとのことで、ちょうど第1ベンチのコンクリート打設を終えたところであった。

      

写真−7 5号橋説明風景            写真−8 5号橋 橋桁上のワーゲン

    

写真−9 8号橋下部工左岸側深礎の見学風景   写真−10 8号橋下部工左岸側深礎の鉄筋組

7.おわりに

 見学者は8号橋株工の見学を終えた後、湯西川ダム工事事務所の会議室に戻り、小宮工務第一課課長に一日の見学を通した質問を受けて頂いた。この際、ダムの試験湛水の期間、付け替え県道の工期から、事業の入札の状況などに関する質問が会場から出た。その後、午後3時に見学者はバス、自家用車にてそれぞれの帰途についた。当日は好天にも恵まれ、大変広い現場を見学させて頂いたにも関わらず、無事スケジュールどおりに見学会を終えることができた。

 今回の現場見学は、県道の付け替え工事を平成23年6月までに完成させ、ダムの試験湛水を同年10月に行うという多忙な現場の中で、多種多様な現場工事を同時に行っている関東地方整備局湯西川ダム工事事務所の仕事の大変さと現場で建設に従事する方々の仕事に対する情熱に触れることができる貴重な機会となった。工事は、平成21年7月にダム本体を設置する岩盤掘削を終え、9月からダム堤体のコンクリート打設を開始する予定と伺った。この現場は、今後増々活気がでて、施工の面白さからもさらに魅力的になると期待される。

 最後に、今回貴重な現場見学の機会を与えて下さいました国土交通省関東地方整備局湯西川ダム工事事務所 佐藤寿延所長とご多忙な中、現場を一日案内して下さいました小宮秀樹工務第一課課長にこの場を借りて御礼申し上げます。